問いかけ

 

「恭弥〜っ!」

その男は、自分を見つけるといつもそう言って嬉しそうに手を振ってくる。
自分と会ったら喜ぶどころか、進んで声をかけてくる人間だってそうはいないのに。

だからその男が来るたびに、僕はいつも心の中で同じ質問を繰り返している。



―――ねえ、どうしてそんなに嬉しいの?












並盛中、応接室。
風紀委員長の雲雀恭弥は、足を組んでぼんやりと考え事に耽っていた。

その傍では、副委員長の草壁が応接室の掃除にいそしんでいる。
つい先日掃除をしたばかりのように思うのだが、本当に顔に似合わずマメな男だ。

そう言えばこの男も進んで自分にかかわってくる数少ない人間の一人だと気付き、雲雀は口を開いた。

「草壁、一つ聞くけど」
「はい、何ですか?」

草壁は雑巾を動かす手を止めて背筋を伸ばし、雲雀の方に向き直った。
雲雀は草壁には顔を向けず、質問だけを投げかける。

「君は、何でここにいるの?」
「は?」

草壁は一瞬きょとんとしたものの、すぐに胸を張って答えを口にした。

「それは当然、委員長のお役に立つためです!」
「ふうん…」

雲雀はまだ納得のいかない様子で腕組みをして、さらに言葉を続ける。

「それって、僕を好きってこと?」
「はっ!?え、ええと、そのっ…」

草壁は顔を赤く染めてしどろもどろに慌てふためきだした。雲雀はその反応が理解できずに、首を傾げる。
しばらくして、草壁は咳払いを一つ。

「ききき、嫌いでしたらお傍にはいません!」

どもりながらそう言うと、草壁は「見回りに行ってきます!」と応接室を飛び出していってしまった。
一人残された雲雀は、草壁の答えを頭の中で反芻してみる。

「嫌いだったら傍にはいない、か―――」

では、あの男はどうだろう?
特に用も無いのに、日本に来るたびに必ず自分のところに顔を出しに来るあの男は。

「今度来たら、聞いてみようかな」

そんなことを呟いた時、廊下に足音が響いた。生徒の上履きの音とは違う、まっすぐに応接室へと向かってくる足音。
どうやら、早くもその“今度”が訪れたらしい。



やがて足音の主は応接室の前で立ち止まり、いつもの調子でドアを開ける。

「よう、恭弥!久しぶりだな!」

その声を聞いてから、雲雀はおもむろに顔を上げ、ずっと心の中にくすぶっていた問いを口にした。



「―――ねえ、僕のこと好き?」

 


雲雀さんは敵意には敏感でも、好意にはなかなか気付かないと思うのよ。
書きながら草壁×雲雀もいいな、とかちょっと思った(笑)でもやっぱ草壁→雲雀なんだろうな。草壁は雲雀さんに手を出せないと思うので。草壁×雲雀はプラトニックな関係なんだよ。
(2006.7.15UP)

 

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