内緒の気持ち

 

「恭弥!久し…」

陽気な笑顔で応接室のドアを開けたディーノは、挨拶の言葉を止めて「あれ?」と部屋の中を見回した。
雲雀の定位置であるソファの上には、誰の姿もない。

「なんだ、いねーのか…」

残念そうな顔で呟いてから、ディーノはソファに腰を下ろした。
彼のことだ、待っていればそのうち来るに違いない。

『緑たなびく並盛の〜大なく小なく並がいい〜♪』

ふいに聞こえた歌声に、ディーノは顔を上げた。
見ると、見覚えのある鳥がテーブルの上にちょんと立ち並中の校歌を歌っている。
よく雲雀の肩に乗っている鳥だった。

「いたのかお前」

鳥はディーノにかまわず歌い続けている。
並中の校歌を教えているあたりいかにも雲雀らしいと、ディーノは苦笑した。

「お前、他には何も教わってないのか?」

そんなことを問いかけてみたディーノだったが。

『ディーノ!』

鳥のしゃべった言葉に目を丸くした。

「オレ?」

そう言って、まじまじと鳥を見つめる。びっくりした、まさか自分の名前が出てくるなんて―――。

『バカ!スケベ!へなちょこ!』

がくん、とディーノはそのまま机に突っ伏した。

「………恭弥、あんまりじゃねえ…?」

鳥にまでそんなふうに言わなくても、と涙ながらにうな垂れるディーノだったが。

『スキ!アイタイ!』
「………っ!」

―――え!?これって恭弥が教え…っ!?

ディーノは顔が熱くなるのを感じながら、立ち上がった。
と、その時。

ガラリ、とドアが開いた。やって来たのは勿論、この部屋の主である雲雀恭弥。
雲雀は部屋の中に突っ立っている相手を見るなり、顔をしかめた。

「何しに来たの?勝手に入らないでって言ったはずだよ?」

不機嫌な声でそう言って、雲雀はトンファーを構える。
だが、振り返ったディーノの顔を見て眉をひそめた。

「…どうしたの、その顔」

ディーノは真っ赤な顔で突っ立ったまま微動だにしない。
次の瞬間。

『ディーノ!スキ!ディーノ!』

甲高い声が部屋の中に響き、雲雀もその場に固まった。
雲雀はわなわなと肩を震わせながら、ディーノに顔を向ける。

「ご、誤解しないでよね!これは、その…」

慌てて言い訳しようとした雲雀だったが、そこでようやくディーノが口を開いた。

「好きだ、恭弥」
「何を、急に…」
「急にじゃねえよ。ずっと好きだったんだぜ。これでも我慢してきたんだ」
「僕は、あなたのことなんか…」
「んじゃ、コレは?」

そう言って、ディーノは『ディーノ』と『スキ』を繰り返しわめいている鳥を指差した。

「恭弥以外のヤツが教えたとは思えねーんだけど?」
「……っ」

ディーノに見つめられて、雲雀は言葉に詰まった。

「できれば…コイツにじゃなくて俺に向かって言ってほしーな」

悔しそうにディーノを睨んでいた雲雀だったが、ふいに腕を伸ばしてディーノの耳を掴んだ。そうして、そのまま力いっぱい引っ張る。

「いてててて!!ちょっ、恭弥、痛い痛い!!」
「…一度しか、言わないよ」

そう言うと、雲雀は踵を上げてディーノの耳に口を寄せた。



「好きだよ、ディーノ」

 


恭弥は鳥に向かってディーノののろけ話を喋ってればいい。
そんで鳥がそれをあちこちで言いふらせばいい。
そして気づけば二人の仲は並中公認に。
(2007.3.4UP)

 

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