DH女体

 

「39度2分!こりゃーおとなしく寝てるしかねーな」

体温計を見ながらそう言って、ロマーリオは息をついた。

「うう…ぎも゛ちわりぃ…」

ベッドに身を沈めたディーノが、掠れた声で呻く。

「今日の仕事はオレたちがなんとかするから、心配しないでくれよ、ボス」
「ずま゛ねえ…」

熱のせいで上気した頬に苦しそうな表情を浮かべて、ディーノは謝った。
そんなディーノの額に氷を当てながら、ロマーリオは寂しそうに笑う。

「こんな時くらい頼ってくれていーんだぜ。そーでなくたって、あんたはいつも一人で抱えすぎなんだからよ…」
「……ああ、ごめん。わかって…―――」

言葉の途中で、ディーノはふっと瞳を閉じた。
そのままスースーと寝息を立て始める。

「寝ちまったか……。お休み、ボス。いい夢を……」




ああちくしょう、最悪のタイミングだ。
今日のうちに仕事を片付けて、夜の飛行機で日本に行く予定だったのに。
約束しといて行かなかったら、恭弥、怒るだろーなぁ……。




ひやり、と額に誰かの手のひらが触れる。
冷たくて気持ちいい感触に、ディーノの表情が緩んだ。

「きょうや……」

瞳を閉じたままそう呟く。
ああ、早く直してしまおう。そうして、日本にいる愛しい人に会いに行こう。

「なあに?ディーノ」


―――……へ?


次の瞬間、ディーノはベッドから跳ね起きた。
髪はボサボサ、体は汗でべっとりのパジャマ姿で、きょろきょろと寝室の中を見回す。

「ダメだよ、急に起きちゃ」

洗面器でタオルを絞っていた雲雀が、ディーノに気づいて駆け寄ってきた。
雲雀はディーノのベッドの脇に腰を下ろすと、その額に手を当てて眉を寄せる。

「ほら、まだ熱いじゃない」
「きょうや……なんで、ここ、に?」

雲雀はディーノの体をベッドに寝かせながら、穏やかに微笑んだ。

「ロマーリオからあなたが寝込んでるって聞いて、それで―――飛んできちゃった」
「わざわざ…イタリアまで…?」

すると、ぺしりと雲雀の手のひらがディーノの額を叩いた。

「あのね、あなたが一人で背負いすぎだって感じてるのはあなたの部下だけじゃないよ。僕だってそうなんだから。例えば今回みたいに―――あなたが動けないなら、僕が代わりにイタリアに来ればいいでしょう?」
「けど、恭弥にそんな…」

ディーノがそこで口をつぐむと、雲雀は不機嫌そうに顔をしかめた。

「あなたはわかってない。自分だけが好きみたいに思ってる」

そこで身を屈め、雲雀はディーノに口付ける。
唇を離すと、雲雀は泣きそうな表情を浮かべてディーノの瞳を見つめた。

「ねえ、わからないの?僕だって……あなたが僕を想ってくれるのに負けないくらい、あなたのことを想ってるんだ」
「…………」
「だから、僕にも背負わせてよ」

雲雀の手のひらがディーノの頬に触れる。
その手に自分の手を重ねて、ディーノは瞳を閉じた。

「恭弥、ありがとーな…」
「いらないよ、お礼なんか」
「ああ…。そんなら、ワガママ言ってもいーか…?」
「うん」
「……恭弥に甘えたい」
「うん……」

ディーノの頭を抱えるように覆いかぶさり、雲雀はその体を抱きしめた。
ディーノは幸せそうに顔を緩め、柔らかい雲雀の体に顔を摺り寄せる。
そんなディーノの頭を愛しげに撫でながら、雲雀はそうっと口を開いた。

「お休み、ディーノ。いい夢を…―――」

 


ディーノは一方的に愛情を押し付けてくる人かもしれない。
(071229log)

 

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