「ん〜〜〜…」
ごろんと寝返りを打ってから、ディーノは目を開いた。
瞼をこすりながら、隣にいるはずの恋人の姿を探す。
いないと思い体を起こしたところで、バスルームから漏れてくるシャワーの音に気がついた。
しばらくすると、シャワーを終えた雲雀がディーノのいる寝室へと戻ってきた。
髪をタオルで拭きながら、一糸まとわぬ姿でスタスタと歩いてくる。
白い肌のいたるところに、昨夜ディーノのつけた後が生々しく残っていた。
「起きたの」
「ああ、おはよ」
そう言ってから、ディーノは困惑げに髪をかき上げる。
「なあ、恭弥…もうちっと隠しながら出てきたらどーだ?」
「なんで今更あなた相手に隠さなきゃならないの?」
「いや、それはそーなんだけどよ…」
確かに今では互いの体なんて見慣れてしまった。
けれど思えば、初めて抱いた時から、雲雀は体を見せたり触れられることに恥らう様子を見せていなかったように思う。
雲雀らしいと言えば雲雀らしい。
けれど、普通はこの年頃の少女なら―――特に初体験の時には、もっと恥ずかしがるものではないだろうか。
「あなたは僕に恥らって隠して欲しいわけ?」
「んなこと言ってねーって」
雲雀がむくれているのに気がついて、ディーノは苦笑した。
彼女は普通の女と同じように振舞うことを好まないし、そう求められることを嫌う。
ただちょっと思ってしまったのだ。
恥ずかしがる雲雀を見てみたい、と。
どんな女の子よりも、きっと可愛らしいに違いないから。
と、体を拭いていた雲雀が体を震わせた。
「あーあ、風邪ひく前に早く服着ろよ」
そう言って、ディーノはハンガーに掛けてある雲雀の制服を取った。
雲雀に渡そうとしたところで、学ランの内ポケットから何かが落ちる。
ディーノが拾い上げると、それは並盛中の生徒手帳だった。
何の気なしに表紙を開くと、そこに入れられている一枚の写真が目に入る。
それはまだ付き合いだす前に、ロマーリオに撮って貰った雲雀とのツーショット写真だった。
嫌がる雲雀の肩を引き寄せて無理やり撮ったのを覚えている。
それを表すかのように、写真の中の彼女はこれ異常ないほど不機嫌な仏頂面だ。
現像して雲雀にも渡したけれど、てっきり捨てられているとばかり思っていた。
それなのに、まさか今まで持ってくれていたなんて―――。
「恭弥」
「なに?」
振り返った雲雀は、ディーノの手にしている生徒手帳に気がついた。
瞬間、ディーノの顔が緩んでいる理由を悟る。
「これ、持っててくれたんだな」
「ち、違うよ…っ。それはその、ただ入れてただけで…っ」
「うん。でも大事に持っててくれたんだろ?」
雲雀は言葉につまり、一気にその顔を赤く染めた。
ディーノはことさら嬉しそうにそんな雲雀を見つめながら、歩み寄る。
そうして、まだ何もまとっていないその体を暖めるように抱き締めた。
「捨てられてると思ってた」
「そんなわけないじゃない……だって、あなたの写真だもの」
「恭弥、顔真っ赤だぜ。恥ずかしいのか?」
「当たり前だよ。持ってるのバレないようにしてたのに……」
雲雀は眉を寄せて、赤い顔で睨むようにディーノを見上げる。
その可愛らしさはディーノの想像以上だった。
裸を見せるのは平気でも、写真を持っているのがバレるのは恥ずかしいなんて、それもまた彼女らしい。
「好きだぜ、恭弥」
耳元で甘く囁くと、小さく消え入るような声で、そうっと同じ言葉が返ってきた。
恭弥は肉体的には平気でも精神的な面で恥ずかしがる子だと思う。
(071216log)
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