「もーあんなヤツ別れてやるっ!!」
やって来るなりそう喚いて、獄寺はテーブルにこぶしを振り下ろした。
「何があったの?浮気でもされた?」
コーヒーを入れながら、雲雀は獄寺に問いかける。
まさかあの山本に限って―――と思いながらも、もしそうならばただでは済まさない、と雲雀はひそかに殺気をたぎらせた。
すると、獄寺は怒りも露わに口を開く。
「あのヤロウ、AV持ってやがった…っ!」
「なんだ、そのくらい」
「そのくらい!?だってオレと付き合ってんだから必要ねーだろ!?それともオレじゃー足りねえってのかよ!?」
「隼人があんまりやらせないからじゃないの?」
「う…っ」
雲雀がさらりと言うと、獄寺はぐっと言葉に詰まった。
別に獄寺が“やらせない”わけではなく、この二人の場合周りの妨害が多いせいなのだが、獄寺は反論することも忘れて赤くなっている。
「じゃー、跳ね馬はどーなんだよ?イタリアにいる間、アイツもAVとかで…」
「まさか。あの人の場合はそんなの観なくたって、いくらでも生身の女が寄ってくるでしょ」
「んなのっ、お前はいーのかよ!?」
「いいわけないでしょ。向こうで浮気なんかしたら咬み殺しに行くよ」
雲雀はにこやかに笑みを見せたが、言っていることは物騒だ。
「じゃあ、跳ね馬はお前に会うまで我慢してんだな」
「うん。どうしても我慢できなくなったら電話でするし」
「でっ…!?」
「あれ?隼人もしかして知らないの?テレフォンセッ…」
「ぎゃーーーー!!言うなーーーーー!!!」
獄寺は真っ赤になって雲雀の口を塞いだ。
「隼人もAV観られるのが嫌ならもう少し相手してあげたら?でないとそのうち本物の女に手を出されるかもよ?ま、もし隼人を裏切ろうものなら僕が許さないけど」
獄寺が俯いていると、雲雀は「ところで」とその顔を覗き込み。
「どーいうの観てたの?」
「えっと……ナースとか、スチュワーデスとか、セーラー服とか……制服もの?」
「なるほどね」
くだらない、といった表情で雲雀は息をついた。
そんなものを着たAV女優なんかより目の前の獄寺の方が可愛いに決まっているのに。
でもまあ、そういうのを求めているならわかりやすい。
「演劇部と、並盛病院と……あとは……」
「恭弥?」
腕組みして何やら思案している雲雀に獄寺が不安げに声をかけると、雲雀は顔を上げてにこりと笑った。
「隼人のためにいいもの用意してあげるよ」
それから、日曜日。
「あ、いけね。処分すんの忘れてた」
ベッドの下に隠していた数本のAVを発見して、山本は頭を掻いた。
「もういらねーから捨てようと思ってたんだっけ」
獄寺に見つかったら怒られるのなー、と呟きながら、山本はそれをゴミ袋に押し込んだ。
獄寺とお付き合いする前はよくお世話になっていた代物だけれど、なんたって今の自分には獄寺という最高に可愛い恋人がいるのだ。
こんなもの必要とするはずがない。
「っと、もーこんな時間か」
今日はこれから獄寺のマンションで宿題を教えてもらうことになっている。
山本は支度を終えると、うきうきした足取りで家を出た。
その頃、マンションで待つ獄寺が、ナース服やメイド服を手に鏡の前で試行錯誤していることも知らずに。
やはり女体で仲良しが書きやすい。
(071124log)
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