アジトで山獄

 

「10代目、ちょっとお聞きしたいんですが…」

リボーンの元へ向かう途中の廊下で、正面からやって来た獄寺くんに声を掛けられた。
珍しく思い悩んだ顔で、一心にオレを見つめてくる。

「いいよ。なに?」
「その……10年後のオレって、どんなでした…?」
「え?」
「やっぱ、男くさいってゆーか…ごつくなってましたか…?」

獄寺くんの問いかけに、オレは首をひねって考え込んだ。
おそらく獄寺くんとしては、男らしく大きくたくましくなった自分を期待しているんだろう。
けれど、オレの会った10年後の獄寺くんは、背丈は大きくなっていたものの、決して男くさいという感じじゃなかった。
かと言って女の人みたいになよなよしていた、とかいうわけではなくて。
なんというか…綺麗で、色気があったのだ。

「10代目、正直におっしゃってください!」
「いや、その、えっと…」

切羽詰った様子の獄寺くんに、正直に言ってよいものかと逡巡する。
けれど、その後で獄寺くんはこう続けた。

「オレ、やっぱりごつくなっちまうんでしょう!?」
「そんなことは………え?」

その言い方に不自然なものを感じて、一瞬思考が止まる。
なんだかその言い方だと、ごつくなるのがイヤみたいに聞こえるんだけど…?

「覚悟は出来てるんです!親父に似たらごつくなるに決まってるし…」

言いながら、獄寺くんはぶるぶると体を震わせ今にも泣きそうな表情になっている。
どういうことだ、なんで君はそんなにごつくなるのがイヤなんだ獄寺くん。

「二人してなんの話してんだ?」

その時、突然現れた山本が、ガシッと背後から獄寺くんの肩を抱いた。

「おわっ!山本!?」
「獄寺、ごつくなんのイヤなの?」

きょとんとして、山本が獄寺くんに尋ねる。
獄寺くんはその体を押しのけたかと思うと、涙目で山本を睨みつけた。

「オレに構うんじゃねえよっ!どーせオレがごつくなったら女の方が良くなんだろーがっ!!」

あ、なんか獄寺くん可愛い―――て言うか今、さりげなく爆弾発言しなかった?

「何言ってんだよ!オレが獄寺以外好きになるわけねーじゃん!」

あ、山本まで爆弾発言。そうか、君たちそうだったのか。

「んなこと言ったって、お前ごつい男の体見てソノ気になんのかよ…っ!?」
「獄寺ならどんなんでもいーんだって!オレが獄寺以外に反応しねーのわかってんだろ!?」

ああもう、廊下の真ん中でなんつー会話だ君ら。
とてもじゃないけど京子ちゃんやハルには聞かせられない。

「お取り込み中悪いんだけど」

ズキズキと痛む額を押さえつつ、オレは二人の会話を遮った。
途端、獄寺くんの顔が真っ赤に染まる。
あのさあ、完ペキにオレの存在忘れてたよね?

「獄寺くん、ぜんぜんごつくなってなかったよ。背は高いけど細身で……こう言っちゃなんだけど、すっごい綺麗だった」

すると、ぱあぁぁとまるで花が咲いたかのように、獄寺くんの顔が輝いた。

「そ、そーっスか…。なんだ…」

ほうっと息をつき、獄寺くんは歓喜に打ち震えている。
その体を包み込むように抱きしめ、山本はその頭を撫で撫でした。

「良かったのなー、獄寺。ま、オレはどっちにしろ好きだけど」
「バ、バッカヤロ!てめぇ、10代目の前で何恥ずかしーこと言ってやがる!!」

いやそれ、今さらだから。
心の中で突っ込み、「じゃ、オレ行くねー」と力なく二人に別れを告げた。

いいよもう、今も10年後もお似合いだよ君ら。
どうか、勝手に末永くお幸せに。

 


ツナ巻き込まれてます。
(070523log)

 

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