これからの関係

 

学校の近くの道を歩いていた雲雀は、前方から歩いてくる男に気付いて足を止めた。
華やかな雰囲気を醸し出しているその男は、雲雀に気付くと嬉しそうに手を振ってくる。
と、その横にいた子どもがディーノの裾を引いた。

「ディーノ兄、僕先にツナ兄の家に行ってるね」
「ああ。また後でな、フゥ太」

ディーノに頭を撫でられた少年は、小さな手を振りながら走り去っていった。
そうか。どこかで見たことがあると思ったら、よく沢田の後ろについて回っている子どもだ。

「よっ、恭弥。今帰りか?」

ディーノはにこにこしながら雲雀に歩み寄ってきた。
雲雀はフゥ太の後ろ姿を見遣りながら、口を開く。

「あれ、あなたの弟?」
「ん?いや、弟分みたいなもんだな」
「……前、沢田のこともそんなふうに言ってなかった?」
「ああ。オレにとっちゃどっちも弟みたいなもんさ」
「何それ。理解できない」

雲雀はふいっと顔を逸らして歩き出した。

他人同士で群れることに何の意味があるのだろう。
自分にはそんなもの必要ない。

「待てよ、恭弥。せっかく会ったんだしもうちょっと話そうぜ」

後ろから追いかけてきながら、ディーノが言う。

「さっさと沢田の家に行ったら?弟分たちが待ってるんでしょ?」
「あ、そーだ。お前も一緒に来いよ」
「やだ」
「おい〜」

雲雀は足を止め、じろりとディーノの顔を睨んだ。

「弟分ならもう足りてるでしょ?」

そう言うと、雲雀は再び歩き出す。

「待てよ!」

その腕を、ディーノが力強く掴んだ。

「おわっ!」

ヒュッ、とトンファーを振ると、ディーノが慌てて身をそらす。

「離してよ。殺されたい?」
「あのなあ、お前のことは弟分とは思ってねーからな!」

ぴく、と雲雀の眉が動いた。

「…そう。良かった」

やはり自分はディーノにとってその程度の存在か。
雲雀はディーノの腕を振り払うと、くるりと背を向けた。

「恭弥?おい?」
「僕はあなたにとって関係ない人間なんでしょ。ほうっておいてよ」
「はあ?なんでそーなんだよ!」

慌てて追いかけてきて、ディーノがその肩に手をかける。
ヒュンとトンファーが唸り、今度はしっかりとディーノの体に一撃を食らわせた。

「ぐわっ!」

ディーノは腹を押さえてしゃがみ込む。

「ちょ、ちょっと待てって、恭弥!」
「うるさいよ。もっと食らいたい?」

雲雀がトンファーを構えると、ディーノは慌てて手を振る。

「だから聞けって!誰がお前のこと関係ないなんて言った!?」
「弟分じゃないんでしょ」
「だからっ、それは…」

ディーノはぐしゃぐしゃと頭を掻き回した。

「お前はもっと別のモンなんだよ!そのー…」

そこで言いよどみ、ディーノは顔を赤く染める。

「?」
「オ、オレの希望としちゃあ…恋人がいーんだけど…」

ぼそぼそと呟かれた言葉に、雲雀の表情が動いた。

「そ、そんなわけで!オレはお前のこと弟分とは思えな…」

ゴッ!!

トンファーの直撃を食らい、ディーノはそのままその場に倒れた。

「くだらないギャグ」

そう言って、雲雀はトンファーの先で伸びているディーノの後頭部を小突いた。

「本当に、くだらないよ」

けれど、どうしてか頬は緩む。

「まあ、せいぜい頑張ってみたら…?」

そう言い捨てると、雲雀はディーノをほうって歩き出した。
その顔に、楽しそうな笑みが浮かぶ。



あなたの頑張り次第では、本当になるかもしれないよ―――?

 


恋人未満なディノヒバ。ディーノさんの頑張り次第で落ちますよ。
ヒバリさんにマジ惚れでもじもじしちゃってるディーノさん。
…何このイタリア人。どこの純情青年?(え)
(2006.7.12UP)

 

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