「へえ、山本の父親にばれたの」
「まあ、しょーがねえっつうか…成り行きでな」
「それで、交際には賛成してくれてるの?」
「ああ、そりゃもう!元々良くしてくれてたけど、彼女ってわかってからは余計だぜ〜!もうすっかり未来の嫁扱いで…」

そこまで言って、獄寺は頭を掻いた。

「けど、なあ…」
「なに?」
「オヤジさんから、二人きり禁止令が出ちまって…」
「…は?」
「や、中学生のうちは淫らなことすんじゃねえ!とか言われてよ…手をつなぐ以上のことはしちゃダメなんだと」

すると、雲雀はくすくすと笑い出した。

「笑い事じゃねーよ…」
「ごめん。でも、隼人は助かったんじゃないの?」
「う…そりゃそーなんだけど…。けどなあ、山本の沈みようがなあ…」

そう言って、獄寺は浮かない顔をした。
助かる反面、本当は獄寺自身もなんとも言いようのない寂しさを感じているのだ。

「なに?そろそろ山本としたくなった?
「ストレートな言い方すんなよ!!」
「だって、そんな顔してる」

よほど可笑しいのか、雲雀は肩を震わせて笑っている。

「別にそこまで思いつめちゃいねーよ!ただ、最近ちょっとコミュニケーションがだな、足りてねえ気がすっから…」

赤い顔で、獄寺はごにょごにょと言葉を濁した。

「デートでもしたら?まだ二人きりでしたことないでしょ」

雲雀の言葉に、獄寺が大きく目を見開く。

「そっか、そーいやそーだよな…。デートくらいならオヤジさんも反対しねーだろーし…」















その週の日曜日。

獄寺は待ち合わせの場所で山本を待っていた。
今日の服は自分の好みで選んで買ってきた物。黒いブラウスにチェックのミニスカート。
いわゆるゴスロリで言うならゴシック系寄りな格好だった。
さらには学校の連中に会っても自分だとばれないように、茶髪のロングヘアのカツラをかぶり、色のついたサングラスをかけている。
これで誰が見ても獄寺隼人には見えないはずだった。

「ねえ、彼女」

ふいに声をかけられて、獄寺は顔を上げた。
高校生くらいの男が三人、獄寺を取り囲むように立っている。

「ヒマ?誰か待ってんの?良かったらさ、オレたちとどっか行かない?」
「失せろ」

きっぱりと言い捨てて、獄寺はぷいっと顔を逸らした。
この場でのしてやりたいが、変装している状態であまり目立つことはしたくない。

「そんなつれないこと言わないでさー。すっげえスタイルいいよね、ハーフ?」
「てめえら、失せろっつって…」

その時、商店街の向こうから歩いてくる山本の姿が見えた。
助かった、と一瞬胸を撫で下ろした獄寺だったが、そこで重大な事実に気づく。

この格好じゃ、山本もオレだってわかんねーじゃん……!

どうしようか、どうやって山本に気づかせようかと獄寺が内心慌てふためいていると、山本はまっすぐにこちらへ駆けてきて。

「こいつに何か用っすか?」

そう言って、獄寺と男たちの間に割って入った。
ギロリ、と山本の鋭い眼光に男たちが怯む。

「な、なんだよ、ヤロー付きかよっ」
「ちぇっ」

男たちが逃げるように行ってしまうと、山本は獄寺の方に振り向いて頭を掻く。

「わりーな、オレが遅れたせいで。でもあんな奴ら相手におとなしくしてるなんてお前らしくな…」
「てめえ…なんでわかった?」
「ん?」
「なんでこの格好でオレだってわかったんだよ…?」
「え?だって獄寺は獄寺じゃん」

そう言って、山本は何でもないことのように笑う。

「今日の格好すっげー可愛いな!こないだのヒラヒラしたのも良かったけど、やっぱこーいうのの方が獄寺らしいぜ!でも獄寺の髪と目の色好きだから、隠しちまうのはなんか勿体ねー感じが…」
「お前って…ほんと単純…」

とん、と獄寺は山本の胸に額を当てた。

「え?どした、獄寺?」
「なんでもねぇよ…っ。ほら、さっさと行くぞ!」






















「どーした?なんかさっきから上の空じゃねえ?」
「ちょっとね……」

ホテルの部屋でソファに身を沈め、雲雀は憂鬱な面持ちで口を開いた。

隼人が今日山本に食べられるかもしれないと思うと気になって……」
「ぶほっ!!」

思わず飲んでいたエスプレッソを吹き出し、ディーノはげほげほとむせ込む。

「おいおい、あいつらもとうとうそーいう時期か?」
「制限されたことがかえって隼人を刺激したみたいでね」

雲雀ははぁと息をついた。

「心配しすぎだぜ、恭弥。なるよーになるって」
「わかってるけど……」
「それより折角オレと二人きりなんだからさ、オレのこと考えてくれよ」

そう言うと、ディーノは雲雀を手招いた。
歩み寄ってきた雲雀の手を取り、ディーノはそのままその体を膝の上に抱え込む。

「受験勉強ちゃんとしてっか?」
「してるよ。これでも成績はそれなりに…」

言いかけて、雲雀はディーノの顔を見上げる。

「婚約のままであと三年も待たせちゃうけど……待っててね」
「わかってるって。恭弥のためならいくらでも待つさ」
「だけど…あんまり待たせるとあなたオジサンになっちゃうし…
「なっ…オレはまだ若ぇーよ!オジサンってのはだな、ロマーリオくらいの…」

ディーノの言葉の途中で、雲雀はくすくすと笑い出した。

「ったく…からかうなよ、恭弥」
「ごめん。あなたは素敵だよ、ディーノ」
「恭弥は…これからもっとキレイになんだろーな…」

ディーノは瞳を細めて、雲雀の髪を撫でた。
今の雲雀はまだ少女だ。これから三年、五年と経てば、女として美しく成長することだろう。

「…心配?」
「そりゃ、お前に言い寄る男が増えんのは心配に決まってんだろ」
「大丈夫だよ。あなた以外の男になんか触らせないから」
「たりめーだ。他のヤローになんか渡さねぇよ」

ディーノはぎゅうと雲雀の体を抱きしめ、その耳元に口を寄せた。

「オレ、生涯愛するって誓っただろ?」
「うん…」

 


心境の変化で獄寺くんがやる気になってきました(ええー)
剛ったら逆効果だよ!
進行中の山獄に比べてDHは婚約まで終わっちゃったので出しづらいです。もうこれ以上なんもさせようがないよ、この二人。
(2007.10.10UP)

 

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