「あ、いたいた!」

パーティー会場の中に山本の姿を見つけて、ツナは駆け寄った。
近くまで行ったところで、山本の後ろにいるドレスを着た少女が獄寺であることに気がつく。

「獄寺くん!その格好…」

驚いて山本と獄寺を交互に見るツナに対して、獄寺は気まずそうに笑い。
「バレちまいました」とだけ、答えた。

「えー!?ってことは…」
「聞いてくれよツナぁ!獄寺もオレのこと好きだって!んでオレたち付き合うことになったのなー♪」

嬉しそうに言いながら、ガシッ!と山本はツナの肩に腕を回してきた。

「バッ…!てめ、んなこと大声で言うんじゃねーよ!」
「いーじゃん。こんな嬉しいこと言わずにいられねーって!それにどーせツナにはほっといてもバレるだろーし!」
「そ、そりゃそーだろーけど…」

獄寺は恥ずかしそうに赤くなっているけれど、本気で嫌がっている気配はない。
二人の幸せそうな様に、ツナは微笑んだ。

「おめでとう、二人とも」




「あれれのれ〜?またおっぱいでかくなってるぞ〜?」

足元から聞こえた声に下を向くと、獄寺の足元でランボがじいっと見上げていた。

「ねえねえ、なんでおっぱいでかくなってるの?」
「アホ牛…妙なことに興味持つんじゃねえ!」
「あはは、そりゃ不思議に思ってもしょーがねえよなあ」

呑気に笑いながら、山本はランボを抱え上げる。
ところが、ランボは獄寺に向かって手足をばたつかせた。

「ランボさん、あっちがいい!」

言うなり、山本の手から抜け出して獄寺に飛びつく。
そうして、その豊かな胸にしがみついた。
母親を思い出しているのか、ランボは獄寺の胸に顔をうずめて幸せそうだ。

「あーーーっ!ダメだって、それはオレのっ!!
「って、いつお前のになったんだよ!」
「や、山本…大人気ないよ…」
「とにかくダメだっっ!!」

山本はランボを引き剥がしてツナの手に渡すと、獄寺をぎゅうとその腕に包み込んだ。

「わっ!離せこのスケベ!」
「やだ!」
「やだじゃねー!10代目の前でみっともねーだろーが!!」
「あ、はは…獄寺くん、オレは別に気にしないから…」

とその時、パーティー会場の照明が暗くなり、ロマンティックな音楽が流れ始める。

「わ!何っ!?」
「ガハハハ!ツナ〜、あっちで抱き合ってるぞ〜!」

ツナがランボの指差した方を見ると、あっちでもこっちでもしっかりと抱き合っている男女の姿。
どうやらチークタイムらしい。

「ボス」

ぴとり、と後ろから自分に寄り添ってきた少女に、ツナの体が固まった。

「ク、クロームさん!いつの間に!」
「ずっといたよ。ボスが気がつかなかっただけ。それより、踊ろう?」
「え?い、いや、オレは……って、ちょっとーーー!?」

クロームに引っ張られて、ツナはパーティー会場の向こうへと消えていった。

「じゅ、10代目ーーー!」

慌てて追いかけようとした獄寺だったが、山本の腕に包まれてその動きを阻まれる。

「おい、離し…」

山本に顔を振り向けた瞬間、唇に柔らかい感触が触れた。

「ツナのこと考えんなって。オレのことだけ、考えて?」

そう言って、小首を傾げられる。
獄寺の顔が、薄暗い中でもわかるほど赤く染まった。

「ダンスってどーやんの?」
「てっ、てめーに出来んのかよっ?」
「やってみねーとわかんねーじゃん。なあ、教えてくんね?」
「しょーがねえな…」




















「っかしーな…。ボスはどこに行っちまったんだ…?」

パーティー会場を探し回りながら、ロマーリオは困惑げに頭を掻いた。
いい加減に自力でたどり着けるかと思ったのだが、やはり迷っているのだろうか。

「他も探してみるか…」

そう言って、ロマーリオは会場を後にした。






廊下を歩いていたロマーリオは、前方に腕を組んで歩くカップルがいるのに気がついた。
男の方の後ろ姿は、どう見ても自分のところのボス。
横に寄り添っているのは、黒髪ショートヘアに赤いドレスの女性だった。

ロマーリオは血相を変えて二人の元へと駆け寄り、ディーノの肩を掴む。

「ボス!恭弥という恋人がいながら何してんだ!?オレはぼっちゃんをそんな風に育てた覚えはねぇぜ!?

「わ!?ロマーリオっ!?」
「まったく情けねえっ!オレは天国の9代目に何て言って詫びりゃあいーんだ!」
「ちょ、落ち着けってロマーリオ、誤解だって…」
「どこが誤解だってんだ!こんな行きずりの女と腕組んで歩きゃあがって…」

そう言いながら、ロマーリオは腕を伸ばしてそこにいる女を指差した。
が、女はその腕を掴んだかと思うと、ものすごい力でねじ上げる。

「いつつ…っ!な、何しやがる…」
「誰が行きずりの女だって?」
「あ…?え…?」

ようやく女の顔を見たロマーリオは、ぽかんとした。
その顔は間違えようもなく、ボスの恋人、雲雀恭弥。
けれど―――。

ロマーリオは雲雀の体を上から下まで見下ろした。
滑らかな体のラインは、15歳とはいえもう十分に女を現している。

「ロマーリオ、あんま見るな」

ロマーリオが凝視していると、ディーノの手がその目を覆った。

「お、おいおい、どーなってんだ。恭弥、お前いつから女に…」
最初からだよ。失礼だね」

雲雀がむっとして答えると、その横でディーノが苦笑する。

「男のフリしてただけなんだとよ。オレもさっき知ったんだ。ま、言われてみりゃどー見ても女の子なんだけどな…」

すると、ロマーリオはふるふると体を震わせ。
それからガバリと腕を顔に当てて泣き出した。

「こいつは目出たいぜ!これでよーやくボスが身を固めてくれるってもんだ!」
「って、話を飛躍させんなよ!恭弥はまだ中学生なんだからな!」
「なに言ってんだ、女の成長なんてあっという間だぜ!こーしちゃいられねえ、先代の墓前に報告だ!」

そのまま、ロマーリオは意気揚々と走り去っていった。






「ったく〜…勝手に盛り上がってくれやがって…」

ぼやきながら頭を掻いたディーノは、横で不機嫌そうな雲雀に気づく。

「恭弥?」
「どうせ僕はまだ中学生だよ」
「何怒ってんだよ。しょーがねーじゃん、ホントのことだろ?」
「その中学生に手を出そうとしてたのは誰さ?」
「う゛…っ、それは、その…」

雲雀の指先が、ディーノのスーツを掴んだ。

「…僕、ちゃんとあなたの恋人になれるよ?」

いつもの鋭い眼光は影を潜め、黒い瞳が不安げに揺らぐ。

自分が言っているのはただのワガママかもしれない。
可愛い言い方なんてできないし、大人のこの人に釣り合う方法なんてわからない。

「…恭弥」

そっとディーノの手が肩に置かれた。

「ごめんな。でもオレ、まだお前に負担かけたくないっつーか…あんま急がせたくねえし…」
「平気だよ。あなたを選んだ時点で、そのくらいの覚悟はできてるんだから」
「…そっか」
「だから…ちゃんと恋人にして…?」

そう言いながら、潤んだ瞳で見上げられる。
その顔はどう見ても女のもので、ディーノはごくりと息を呑んだ。

中学生だとか、マフィアだとか、そんなものはすべて関係なくて。
ただ、お互いに目の前の恋人だけが愛しかった。

 


普通ならこのまま裏なんですが今回は割愛させてください…!(土下座)
書こうとはしてみたんですが遅々として進まんので……そのうち書き上がることがあればこっそり公開……いや、まあ、書き上がらんと思いますが(弱気)

そんなわけで次もう翌朝です。すんません…!
(2007.9.20UP)

 

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