最近ヒバリと獄寺が仲いいらしーぞ。



日本に着いたもののまだ授業中だったので、先にツナの家に顔を出したらリボーンにそう言われた。

応接室への廊下を歩きながら、ディーノは「まさかな」と苦笑する。
人と馴れ合わない恭弥が、よりによってあの険悪だったスモーキンボムとだなんて。

「急に来たから恭弥びっくりすっかな〜。最近イタリアに缶詰だったし」

ようやく会える可愛いあの子を思い浮かべ、ディーノの顔が緩む。
ディーノは応接室の前で足を止めた。












「恭弥、コーヒーお代わり」

テーブルの上のチョコレートを口に放り込みながら、獄寺は雲雀に空になったカップを差し出した。

「君ねえ…少しは遠慮したら?」

呆れたように言って、雲雀は窓の外に眼を向ける。

「淹れてもいいけど、野球部の練習終わったみたいだよ」
「え!?もーそんな時間かよ!?」

慌てて立ち上がり、獄寺は窓に駆け寄る。
野球部はすでに練習を終え、グラウンドの後片付けをしているところだった。

「んじゃオレ行くから!」
「あ、ちょっと待って」

慌てて出て行こうとする獄寺を引き止め、雲雀はハンカチを獄寺の口元に当てる。

「チョコレートついてる。じっとして」
「あ、サンキュ」




二人がその体勢で向かい合っていると、ふいに応接室のドアが開けられた。

「恭弥ー!久しぶ…」

満面の笑みで現れたディーノだったが、そこに立っている二人を見て表情が固まった。

「!跳ね馬」
「ディーノ…久しぶり」

二人は微動だにしないディーノに、怪訝そうに首を傾げる。

「どうしたの?」

雲雀が顔を覗きこむと、ディーノはそこでようやく我に返り。

「あ!い、いや、その……珍しいヤツがいるん…だな」
「ああ。隼人のこと?そうかもね」
「じゃ恭弥、オレもー行くから」
「うん、またね」
「おー」




獄寺がひらひらと手を振って出て行ってしまうと、雲雀はソファに腰を下ろした。

「あなたも突っ立ってないで座ったら?」
「…ああ」

向かい側に腰を下ろし、ディーノは雲雀の顔を窺い見る。
ごくりと息を飲んでから、ディーノは口を開いた。

「いつの間に、名前で呼び合うほどの仲になったんだ…?」
「だって“ゴクデラ”って濁点多いし呼びづらいじゃない」
「そりゃ、そーだけど…」
「けど、何?」

はっきりしない様子のディーノに、雲雀が苛立って問いかける。

「僕が隼人といると何かあなたにとって不都合でもあるの?」
「そんなことは…」

ディーノは言葉を濁してから、切なげな顔で雲雀を見つめた。

「ただお前のことが気になるだけだ」

とくん、と雲雀の胸が小さく鳴る。
平静を装い、顔を逸らして雲雀は口を開いた。

「…教え子だから?」
「そのつもり…だった、最初は。けど、今は……」

ディーノが膝の上で拳を握る。
観念したように一つ呼吸をしてから、ディーノは続く言葉を雲雀に告げた。


「好きなんだ、恭弥」


雲雀は信じられないといった顔でディーノを見つめ。

「本気なの?」

ようやく、それだけ問い返した。

「ああ、本気だ!こんなことでウソなんかつかねえよ!オレはお前が好きだ!」
「…男が好きなの?」
「ちげーよ!男なんて興味ないはずなんだ!けど……お前のことだけは、性別なんかどーでもよくなるくらいに、好きになっちまって……」

言いながら、ディーノは頭を抱えた。

「ちっくしょー、カッコわりぃ…。スモーキンボム相手に妬くなんて思わなかった…」

そうか、ヤキモチを焼いていたんだ…そう思い、雲雀は知らずと微笑んだ。
隼人にヤキモチなんて、見当違いもいいところなのに。
だってあの子は、僕のたった一人の同性の友だち。

「ごめんな、男からこんなこと言われても困るよな。でもオレは本気でお前のこと…」

わかっている。無責任にこんなことをいう人じゃない。
雲雀は首を傾げて、ディーノの顔を覗きこんだ。

「女の子がいいんじゃないの?」
「だから、男とか女じゃなくてオレは恭弥がいいんだって!」
「でも、どうせなら男より女の方がいいでしょ?」
「何が言いたいんだよ?」

混乱しているディーノの様子がおかしくて、雲雀はくすくすと笑い出す。
どうしようか、教えてあげるべき?



―――とりあえず、これだけは教えておいてあげよう。



雲雀はディーノを見つめて、幸せそうに笑った。



「僕も好きだよ、ディーノ」

 


女の子だと知らないままお付き合い開始。
今回のディーノさんはヘタレなので、まだ押し倒せません。
(2007.9.3UP)

 

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