「お呼びですか、10代目!」

日曜の早朝から階段を駆け上がりツナの部屋に意気揚々と乗り込んできたのは、嵐の守護者、獄寺隼人。

「やあ、話って何だい?」

沢田家の前までバイクで乗り付け、軽い身のこなしで二階の窓から侵入してきたのは、雲の守護者、雲雀恭弥。



「え?え!?」

突然の闖入者二人に眠りを妨げられたツナはベッドから跳ね起き、目を白黒させた。

「お前たち、よく来たな」

ツナの代わりにそう言ったのは、ツナの家庭教師であるアルコバレーノ、リボーン。

「リボーン!お前また勝手に呼んだなー!…あれ?でもなんで獄寺くんとヒバリさん?山本は?」

珍しい組み合わせに、ツナは不思議そうに尋ねた。
最近妙に仲良くなってるとは言え、こういう時に呼び出されるのはたいてい獄寺と山本であったはずだ。もしくは笹川了平。

「リボーンさん、重要な話と言うのは何なんすか?」
「おめーたち」

リボーンは獄寺とヒバリを交互に見上げ、その瞳を光らせた。

「ボスにでっかい秘密があるだろ?」
「秘密?」

そう聞き返したのは、横で聞いていたツナだった。
秘密も何もヒバリのことは未だにほとんど知らないのだが。
けれど、獄寺に関してはそれなりに知っているつもりでいたのに。

「ああ。あるな、獄寺?」

そうリボーンが問いかけると、獄寺は青い顔で表情を固めていた。
まさか本当に自分に隠し事なんて―――とツナの頭に不安がよぎる。

「ヒバリも、あるな?」

リボーンの問いかけに、雲雀は薄い笑みを浮かべる。

「悪いけれど、どれのこと?

案の定、雲雀にはでっかい秘密がごろごろあるらしい。
まずは学年から明らかにしてもらいたいなあ、とツナはこっそり息をついた。

「守護者である以上、ボスに隠し事をするなんて許されねぇぞ」
「リボーン、オレは別に気にしないって!誰だって秘密にしときたいことくらい…」

ツナの言葉の途中で、いきなり獄寺が土下座した。

「申し訳ありません、10代目!!!」
「わ!ちょ、獄寺くん、そんなことしなくていいから!」
「いいえ!オレは…オレは右腕失格です!今の今まで10代目に隠し事をしていました!!」

そう言って、獄寺は床に頭をこすり付ける。

「いいってば!オレは気にしないから!」
「10代目ッ!オレ、実は…」

獄寺は顔だけ起こし、ツナを見上げた。
瞳を潤ませ、何かを堪えるように唇を噛み締めている。



獄寺が決意を固めて唇を開きかけた、その時。

「ああ!ひょっとして、僕と隼人が女だってこと?

ぽん、と手を叩いて雲雀が言った言葉に、ツナの顔が固まった。

「え?え!?女、って……え、二人が!?」

土下座したままの獄寺を見下ろすと、彼はふるふると震えていて。
羞恥に耐えるようなその表情は、雲雀の発言が真実であることを物語っていた。

「すいませんッ!今まで隠していて…!!」
「え……えええええーーー!!?」

ツナは思わず絶叫した。
確かに二人とも男にしては線は細いし顔立ちも綺麗だ。
けれどまさか、そこらの男よりよっぽど腕も立ち男らしいこの二人が。










ツナの部屋でテーブルを囲み正座する、ツナ、獄寺、雲雀、リボーン。
ツナは獄寺と雲雀を見やり、そろそろと口を開いた。

「あの…、ホントに、その…」
「君、僕が嘘を言っているとでも?」
「本当です!信じてください、10代目!」
「い、いや、信じないわけじゃないけど…」

しどろもどろに言葉を濁しながら、ツナは表情を変えないリボーンに目を向けた。

「リボーンはどうして知ってるんだよ?」
「獄寺のことはよくビアンキが話してたんだ。かわいー妹がいるってな。雲雀の方は並中の学生情報を調べさせてもらった時だぞ」

ということは、本当にこの二人は女なのか―――とツナは改めて二人を見た。
二人とも、ちゃんと女の子の格好さえすればかなりの美少女であるだろう。

「そっか…それで最近、急に二人が仲良くなったんだ」
「はあ、偶然女同士だって知りまして…」
「思ったより話が合ってね」

獄寺は両手を合わせ、ツナに懇願するように頭を下げた。

「あ、あの、10代目、このことはどうか他の連中には秘密に…」
「言いふらしたりしたら、咬み殺す」

ジャキン、とトンファーを構えた雲雀に、ツナは慌ててのけぞる。

「わああ!言いません!言いませんから!!仕舞ってくださいーーー!!」

やっぱ女でもヒバリさん恐えーーー!!!

と心の中で絶叫したツナだった。

 


ツナにカミウングアウト。
(2007.9.1UP)

 

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