味見
ヒュッ、と空を切る音がして、ディーノは瞳を開いた。
目に飛び込んできたのは、自分の顔面目掛けて飛んでくるトンファー。
「おわっ!!」
それをぎりぎりでかわすと、ディーノはソファから転がり落ちた。
「あいててて…」
と、自分を見下ろす不機嫌そうな少年に気付く。
少しクセのある黒髪に、片腕には風紀の腕章、両手に仕込みトンファー。
並盛中学風紀委員長の雲雀恭弥だった。
「急に何すんだよ、恭弥」
ディーノが立ち上がりながら言うと、雲雀はその表情を変えることなく、ディーノの眼前にトンファーを突きつけた。
「誰に断ってここで寝てるの?」
「ここで休むのに断りがいるのか?」
そう言って、ディーノは応接室の中をくるりと見回した。
「当たり前。そもそもあなたは部外者だよ」
「つったってなあ…お前を待つにはここが一番手っ取り早いだろ?」
「迷惑」
そう一言言い放ち、雲雀はソファーに腰を下ろした。
そうして、突っ立ったままのディーノに構わず風紀日誌を開く。
ディーノは背後から雲雀の体を抱きしめ、その髪に顔をうずめた。
「恭弥、会いたかった」
「…触んないでよ。暑苦しい」
雲雀はトンファーの先端でディーノの頭を小突いたが、ディーノはその手を緩めはしない。
雲雀はむぅと顔をしかめた。
―――気に食わない。
自分を恐れないこの男が。
そして、この手を振り払えない自分が。
力を込めて一撃入れれば済むだけの事。それなのに。
「…むかつく」
「恭弥?」
「咬みついていい?」
そう言って、雲雀はディーノの顔を見上げた。
ディーノは一瞬考えてから、にやりと笑む。
「いいぜ。殺さないなら」
「じゃあ、遠慮なく…―――」
雲雀はディーノの頭を掴むと、首を伸ばしてその口に咬みついた。
歯を立てると、舌の上に他人の血の味が広がる。
口を離してから、雲雀はぺろりと自分の唇についたディーノの血を舐めた。
「不味い」
「いてて…。そりゃねーだろー」
口元を押さえて顔をしかめているディーノに構わず、雲雀は体の向きを変えるとディーノの首に腕を回した。
「ねえ、他も味見させてよ」
雲雀が至近距離で見つめると、ディーノは苦笑しながらその背中を抱く。
「好きにしろよ」
「何それ。抵抗してくれないとつまんない」
そう言って微笑み、雲雀はディーノの首筋に咬みついた―――。
あれ?雲雀さんが攻め?(笑)
もうこの二人はどっちが攻めでもいけそうだ(え)
「咬み殺す」から「咬みつく」にするとちょっとエロい感じになりませんかー。
でも雲雀さんのことだから甘噛みじゃなくて本気で咬みそう。
ディーノさん体中傷だらけで大変だ。
(2006.7.12UP)
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